Fetish Pono(wet,messy,rip)

【連載】第22回:五感が導くWAMへの誘い

毎月10日公開の連載記事として私(ジュテーム家康)が執筆していきます。

 人には必ず、「自分でも理由を説明できないのに心が動く瞬間」があります。たとえば、ある音に触れたときの不思議な心地よさ、ふと漂ってきた香りが呼び起こす感覚、あるいは異性の何気ない仕草に思わず惹きつけられる気持ち・・・。そうした力の正体は、多くの場合、聴覚・嗅覚・視覚といった、生まれながらに私たちに備わっている本能的な感覚と深く結びついています

フェチとは本来、こうした「人それぞれの五感と結びついた小さな好み」のことであり、誰にでもあるものです。決して特別な世界の話ではなく、五感のどこかが過敏に反応する「好き」のことをフェチと言っているだけです。そこに性的なものが絡むことが多いのは確かですが、必ずしもそうではない場合もあります。重要なのは「その人にしかわからない感覚の快さ」ということになります。

たとえば音フェチだと、雨が窓を叩くリズム、部屋の中で響く水滴の音、衣服などの布地が引き裂かれたときの音・・・こうした音に惹かれるのは、脳が「落ち着く」と感じるからだと考えられます。

また香りの記憶も強く残るものです。雨の前に立ち上る土の匂い、夏の水辺のわずかに漂う消毒臭、濡れた髪からかすかに立つシャンプーの残り香・・・。こうした視覚とセットになった香り(または臭い)は、私たちは、脳に強い記憶として結びつけます。一瞬で感情が引き出されて、その香り(臭い)フェチに誘われてしまうこともあるでしょう。

触感に関するフェチも同じで、乾いた布と濡れた布では、触れたときの温度も、まとわりつき方もまったく違います。冷たさ、やわらかさ、重み、濡れることで質感は変わり、触れた人の感覚もまた変化します。そうした触覚フェチの人の中には、服のままずぶ濡れになったり、泥だらけになったりすることで癒されるというWAM実践派が多いのも事実です。

また、「しぐさ」のフェチも忘れてはなりません。異性が手を振る仕草、後ろを振り向くしぐさ、前髪をかき上げる何気ない瞬間・・・それらは単なる動作にすぎないわけですが、その何気ない事に「理由のない美しさ」を感じ心を奪われることがあるわけです。視覚は五感情報の中でもっとも人間に与える影響が高い(情報量の大半を占めるため)とされています。今まで挙げてきた他の感覚器と結びついたフェチよりも「フェチへの誘い」を特に刺激されやすく、日常の中で最も自然に心を動かすものだと考えられます。

さらに、シチュエーションというものが加わると、各々のフェチはさらに増幅されることとなります。黄昏のプールサイド、雨が降った後のグラウンド・・・水と空気と光が交じり合う瞬間に人はなぜか「物語の入口」に立っているような気持ちになることがあります。これらは、五感をきめ細かく刺激し、心の動きを豊かにすると考えられるからです。

一見するとウェットやメッシーとは別の領域に思えるフェチでも、実際には、深いところでつながっています。なぜなら、濡れる、汚れるという行為は、五感の変化そのものだからです。

たとえば、服を着た人が水に濡れると音も必然的に生じ変化もします。また、布地の触感も変わり視覚的にも大きく変化をもたらします。そして、布地の香り(臭い)も変化します。あらゆる物が変わり、しぐさに「意味」が生まれるわけです。つまり、ウェットやメッシーは、実践する人にとっては特に、今述べたような味覚以外の五感を総動員させる行為となります。したがって、鑑賞する者にとっては、五感によって生まれる稀有な体験をしている「行為者の様子」を視覚と聴覚だけを通して受容するわけですが、そこからイメージを膨らませ、映像によって興奮を伴うレベルへと昇華されることが極めて多いわけです。

ウェットやメッシーに限らず、レアと思われがちなフェチの世界も、視点を変えれば「五感の物語」として読み解くことができるわけです。それらは誰もが持つ感覚の延長線上にあるということです。五感の変化を楽しむという意味では、ウェットやメッシーほど「感覚が豊かになる行為」は珍しいといえるかもしれません。

五感が少し変わるだけで、人は世界を別の角度で感じらることができます。ウェットやメッシーは、決して特殊な分野(領域)ではなく、それは「感覚が変わる瞬間」に惹かれる、ごく人間的で普遍的なものだといえるのです。ほんの一瞬の変化に、美しさや心地よさを見いだし、自分とって「好き」な感覚を大切にすることで、フェチの世界はより深く、豊かに味わうことができるのだと考えます
「No Fetish! No Life!」
文責:ジュテーム家康

■フェティシュポノ理念(Mission statement)
https://fetish.gdp22.com/philosophy/

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