Fetish Pono(wet,messy,rip)

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【連載】第14回:「怖いもの見たさ」とフェティシズムの心理

毎月10日公開の連載記事として私(ジュテーム家康)が執筆していきます。

「怖いもの見たさ」という言葉は、誰しもが一度は感じたことのある感情だと思います。それは、恐怖や不安を抱きつつも、どうしてもその対象を目にしたくなるという内的に拮抗した人間特有の矛盾を孕んだ心理状態です。

この感情は単なる一過性の好奇心ではなく、人間の根源的な欲求に由来していると思われます。現代のように情報が溢れ、合理性が支配する社会においては、人々の生活は予測可能で、安全で、整ったものになっています。しかし、その一方で、刺激や非日常を渇望する気持ちは、むしろ強まっているのではないでしょうか。

こうした感情の背景には、非日常なもの、つまり日常生活の中ではなかなか見られない可能性が高い「異常なことへの欲求」と「異常なことへの不安」という相反する二つの衝動が内的に拮抗しているものと考えられます。この拮抗する感情のせめぎ合いこそが、時に人を恐怖映画に惹きつけ、事故現場に目を向けさせたりする「怖いもの見たさ」の正体です。また、それはフェティシズムへの興味にも通じているわけです。

フェティシズムとは、一般的には性的関心が特定の物や状況に向けられる傾向を指すことは過去の記事でも何度か書いてきました。その根底には、ありふれたものが異なる文脈で変容することへの興奮や通常では起こり得ないことにたいする強い関心・願望があります。たとえば、リクルートスーツや学校の制服といったフォーマルな服装は、社会的には清潔さや秩序、規律を象徴するものなので、通常では濡れたり汚れたりする状況とは結びつかないわけです。

しかし、そうした服装をした女性がずぶ濡れになったり泥だらけになったりする非日常的なシーンは、見慣れた日常の象徴が「乱れる」瞬間でもあります。それは秩序の崩壊であり、同時にある種の開放でもあります。こうしたシーンに惹かれる心理は、「ありえないことが目の前で起きる」ことへの驚きや喜び、そして癒やしの表れともいえるでしょう。

「フェチを見たい」という欲求は、日常生活の中(職場や学校など)ではリアルに「フェチが見られない」「その願望や、趣向を周りの人にカミングアウトできない」という社会的な抑圧と隣り合わせにあります。フェティシズムの多くは公的な場で語られることが少なく、しばしば「変わった趣味」として扱われることが多いわけですが、それが「普通ではない」からこそ、人はそこに特別な意味を見出すわけです。つまり、フェティシズムは単なる性的指向ではなく、現代社会の秩序や価値観に対する静かな反抗とも言えるのかもしれません。

このように、「フェチを見たい欲求」と「フェチが見られない不満」は、まさに「怖いもの見たさ」と同じ心的構造を持っているわけです。不安や社会的制約の中で、それ(「怖いもの」だとか「フェチ」)を求めてしまうという点で、人間の欲望は理屈では割り切れないことが分かります。

フェティシズムの世界は実は突飛なものではなく、むしろ、私たちの日常の中に潜在的に(密かに)存在しているものだと思います。清楚なスーツや制服、整った髪型、きれいにアイロンがけされた(あるいはクリーニングされた)ブラウスやシャツ・・・それらはすべて「整ったもの」として機能するわけですが、同時に「乱れを待っているもの」ともいえます。フェティシズムの興奮は、その「整然としたもの」が乱れる瞬間に宿るからです。それゆえに、濡れたり汚れたりするという状況は、視覚的にも強いインパクトを持ちます。そして、そのインパクトこそが、フェティシズムの求める非日常性であり、人間の深層心理に眠る欲望の表れであるわけです。

フェティシズムは、その多様性を理解できない(あるいは理解しようとしない)人たちには変態的なものとして一笑に付されがちですが、実は、人間の感情や心理の複雑さを如実に示すものであり、実に人間的なものなのです。文章の最初の方で述べた、合理性と安全性が支配する現代社会において、「枠」から逸脱したものに惹かれる感情は、自然であり、時には必要なものだとも言えるのではないでしょうか。怖いもの見たさの感情が、ただの好奇心ではなく、深層にある欲求と抑圧のせめぎ合いであるように、フェティシズムもまた、私たちが見失いがちな「人間らしさ」の一側面を映し出しているのです。・・・No Fetish! No Life!

「No Fetish! No Life!」
文責:ジュテーム家康

■フェティシュポノ理念(Mission statement)
https://fetish.gdp22.com/philosophy/

 

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